設立趣意書

 

日本の死刑制度について考える懇話会 設立趣意

 

 2024年(令和6年)2月29日

  1.  我が国の死刑制度は、1882年(明治15年)制定の旧刑法によって、執行方法を絞首刑と定められたものが、現行の刑法にも引き継がれ、今も100名以上の死刑囚がいます。
     死刑は人間の尊い生命を奪う不可逆的な刑罰であるため、「国家が人の生命を奪う」という国家機能の根源に関わる問題を内包しています。
  2.  死刑制度の廃止は国際的な潮流です。世界の7割を超える国が、すでに法律上又は事実上、死刑を廃止しています(196か国中、法律上又は事実上の廃止国は144か国)。とりわけ、先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟38か国のうち、死刑制度を存置しているのは、米国、韓国、日本の3か国です。しかも、死刑存置国に数えられる米国でも、すでに23州とワシントンD.C.で死刑が廃止されています。また、韓国ではすでに1998年以降20年以上にわたって執行を停止しています。したがって、OECD加盟国の中で、いまだに国家として統一して死刑執行を続けているのは日本だけです。
     このため、国際司法共助の上でも、日本で殺人を犯した者が外国に逃亡した場合に、日本政府が逃亡先の死刑廃止国に犯罪人の引き渡しを求めても、日本に死刑が存在していることを理由として引き渡しを拒まれるという指摘もあります。
  3.  日本弁護士連合会は、2016年(平成28年)10月7日に「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を行い、死刑廃止の立場を明確にし、2022年(令和4年)11月には「死刑制度の廃止に伴う代替刑の制度設計に関する提言」により、死刑制度の廃止とともに、その代替刑として終身拘禁刑(ただし、例外的に減刑制度あり)を設けること等を提案しています。また、全国の弁護士会でも死刑廃止決議が相次いでなされています。
     2018年(平成30年)12月5日には、死刑制度の是非を議論する超党派の議員連盟として「日本の死刑制度の今後を考える議員の会」が設立され、将来的な死刑制度の在り方に関する提言とりまとめを目指すとされています。社会の各層の著名人が死刑制度について意見を表明することも増えました。
  4.  ところが、政府の世論調査の結果、国民の8割が死刑制度も「やむを得ない」としていることなどから、死刑制度についての検討は進んでいないのが現状です。
     そこで、私たちは、国民各界及び各層の参加を得て、十分な情報をもとに活発な議論を行い、日本の死刑制度のあるべき方向性について提言するため、ここに「日本の死刑制度について考える懇話会」を設立します。

以上

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